第19回は「働き方改革推進支援センター」の歩き方をお届けします。
同センターは各47都道府県に設置されており、時間外労働の上限規制や正社員と非正規社員の待遇差の解消を図る「同一労働同一賃金」などについて対応を検討する事業者を、無料で支援します。
今回は、厚生労働省雇用環境・均等局有期・短時間労働課および労働基準局労働条件政策課に支援の概要や利用の仕方を伺いました。
「働き方改革推進支援センター」とは
働き方改革関連法への準備などに関する中小企業の現状
日本・東京商工会議所が2019年1月9日に公表した「働き方改革関連法への準備状況等に関する調査」によると、2019年4月から順次施行される働き方改革関連法に盛り込まれた「時間外労働の上限規制」について、回答した中小企業2,045社のうち4割が「知らない」と回答したことが分かりました。
また、正社員と非正規社員の待遇差の解消を図る「同一労働同一賃金」について「知らない」と回答した中小企業は4割を超えており、これらのことから、中小企業の間で、働き方改革関連法の認知度が低いことが分かります。
2019年4月に「年次有給休暇の取得義務化」をはじめ働き方改革関連法の施行が迫っている中、法律の更なる周知が求められています。
▶「働き方改革関連法への準備状況等に関する調査」について詳しくはこちら
働き方改革推進支援センターは、「働き方改革」に向けて、特に中小企業や小規模事業者が抱える課題に対応するためのワンストップ相談窓口として、47都道府県に2018年4月以降順次開設されました。
「働き方改革」とは、労働者が個々の事情に応じた多様で柔軟な働き方を、自身で選択できるようにするための改革です。多様で柔軟な働き方ができる社会を実現させることにより、成長と分配の好循環を構築し、労働者一人一人がよりよい将来の展望を持てるようにすることを目指します。
働き方改革の実現に向けて、2018年6月29日に「働き方改革関連法」が成立しました。同法制度は2019年4月1日から順次施行されます。
同法制度に定められた内容は、主に以下の2つのポイントを主軸としています。
(1)残業時間の上限の規制や1人1年あたり5日間の年次有給休暇付与の義務づけなど定めた
「労働時間法制の見直し」
(2)正社員と非正社員との間の不合理な待遇差の解消を目指す、いわゆる「同一労働同一賃
金」
同法制度の一部には、罰則の有無や大企業と中小企業・小規模事業者で施行時期が異なっていたりするため留意する必要があります。
特に(1)では、残業時間について原則月45時間かつ年360時間、特例として年720時間などの時間外労働の上限が定められており、規定違反による罰則も設けられています。
働き方改革推進支援センターでは、上記の注意点を踏まえ、中小企業や小規模事業者の労務環境改善に向けた支援事業を実施しております。
労務管理を中心としたコンサルティング支援を実施
厚生労働省は、図「各都道府県の働き方改革推進支援センターの連絡先一覧」のとおり、働き方改革推進支援センターを全国に設置し、特に中小企業や小規模事業者の皆さまの、働き方改革に関する疑問や課題を解決する支援を実施しています。
同センターを利用するにあたって、電話、メール、来所いずれかの手段で相談する事が可能です。
具体的な相談内容は、働き方改革関連法によって何が変わるのか、36協定や就業規則の作成方法や見直しの他、利用できる助成金制度などです。
上記の相談内容に基づき、専門家が企業に訪問して改善案や対応を提案します。
働き方改革推進支援センターの支援内容
働き方改革推進支援センターの支援ポイントは、以下の4点です。
(1)働き方改革に係る相談を受付
36協定についての相談や作成方法・就業規則の見直し、同一労働同一賃金の対応などについて、相談を受け付けています。
(2)労務管理に精通した専門家がコンサルティング支援
社会保険労務士や中小企業診断士などの資格保有者などが(1)のような相談内容について、コンサルティングを実施し、適切なアドバイスや改善案などを提案します。
(3)他支援機関との連携による、幅広い支援内容を展開
商工会議所や商工会、全国中小企業団体中央会、よろず支援拠点などといった他支援機関の専門家と連携を取り、労務管理の課題と並行して賃金引き上げや生産性向上に係る課題解決にも取り組んでいます。
(4)セミナーや出張相談会を実施
地域に密着した形で、働き方改革に関する知識や疑問に関する内容や専門家の講演などを交えた「働き方改革推進支援セミナー」が随時実施されています。また、団体・グループ単位の依頼を受け、出張セミナーも開催しています。
セミナー参加や出張セミナーをご希望の方は、お近くの同センターにご相談ください。
(5)助成金・補助金制度を紹介
働き方改革関連法に向けて、労務管理や生産性向上、人手不足などを支援する補助金・助成金制度を紹介しています。
働き方改革推進支援センターのメリット
働き方改革推進支援センターを活用することで、以下のようなメリットがあります。
(1)ワーク・ライフ・バランスが促進される
働き方改革への対応するための支援を受けることで、自社の労働環境が改善され、従業員のワーク・ライフ・バランスの促進につながります。
(2)気軽に相談できる
アドバイザーが社会保険労務士や中小企業診断士の他、人事担当のOB・OGなど民間企業の経験者が担当しているため、気軽に相談することが可能です。
(3)すべての過程において無料で相談できる(3回まで)
同センターで相談した場合、アドバイザーによる改善などの提案や、企業訪問などを無料で受けることができます。ただし、助成金の申請代行での手続きなどについての支援は行っていません。
働き方改革への対応に向けた支援事例を紹介
各47都道府県に設置された働き方改革推進支援センターを活用し、成果を得た企業の事例を紹介します。6事例のうち、労働時間の見直し成果を得た企業を2社ずつ、他機関との連携により経営改善や従業員の健康につながった企業を2社ずつ、非正規社員の待遇改善などに取り組み成果を得た企業を2社ずつ紹介しています。
働き方改革に係る支援事業
中小企業や小規模事業者の皆さまの働き方改革への対応を支援するため、以下のような補助金・助成金制度が設置されています。
(1)業務改善助成金
生産性向上に資する設備や機器の導入などを行うとともに、事業場内最低賃金を引き上げた企業を支援する制度です。
同制度は補助率が引き上げられている他、追加措置された制度などもあります。
(2)キャリアアップ助成金
有期契約労働者や短時間労働者、派遣労働者など、非正規雇用労働者の企業内でのキャリアアップ等を促進するため、正社員化、処遇改善の取組を実施した事業主に対して助成する制度です。
また、上記の他に「働き方改革支援ハンドブック」では、働き方改革に係るさまざまな支援制度を紹介しています。